ロンドンのジャーミンストリートに、「フォスター&サン」という創業170年を越えるビスポーク靴店があります。
ビスポークというのは「話を聞く」という意味で、オーダーメイドの靴屋さんという事になります。
その店舗の2階が工房となっており、4〜5人の職人が毎日靴づくりをしています。
そんな老舗ビスポーク靴店の職人の一人が、今回紹介する
『松田 笑子(まつだ えみこ)』さん。
日本人、しかも意外とハードな仕事である靴職人に、女性でありながら昇り詰めた松田さんから仕事術を学びます!
とにかく行動派
松田さんは昔から足のサイズが大きく、自分に合った靴が無いことで、自分が履ける靴があったらいいなという思いがあり、靴づくりには興味があったそうです。
そんな時、イギリスにコードウェイナーズ・カレッジという靴学校がある事を知り、日本での仕事を辞めて単身で留学してしまいます。この行動力はすごいの一言ですね。
コードウェイナーズ・カレッジで初めて「ビスポーク靴」と出会った松田さんは、自分の手で靴を作り上げる面白さにのめり込んでいきます。
しかし、コードウェイナーズ・カレッジは主にデザインを学ぶ学校なので、ビスポークの講義は週に1度、3時間だけ。これにしびれを切らした松田さんは友人を通じて、伝説の木型職人と呼ばれる『テリー・ムーア』氏に弟子入りします。
ちなみにその時にコードウェイナーズ・カレッジは「もう学ぶ事はない。」と辞めたそうです(笑)
様々な事を吸収する向上心
「フォスター&サン」でラスト(靴の木型)職人のテリー氏を恩師としてからは、修行の日々が始まりました。修行中は週1でお客様の靴の修理を任される事から始まり、徐々に数を増やしていき、一通り任せられるようになるまで5年の歳月を要しました。
テリー氏は木型専門の職人だった為、皮と靴底を合わせる底付け等に関しては、独学で勉強したとの事。
自分で試行錯誤を繰り返し、習得するのは並大抵の努力ではなかった筈です。
それでも松田さんは「修行は一生続くと思っています。」と現状に満足するのではなく、常に自分自身を磨いていくことを心掛けています。
受け継がれ、新しくなっていく技術
現在、テリー氏は膝を痛め、自宅での作業が中心となり、「フォスター&サン」では松田さんを含め、2人の職人が木型作りを受け継いでいます。
テリー氏が木型専門の職人だったことからも分かるように、昔から基本的にビスポーク靴は分業制で仕上げられていきます。
しかし、松田さんはほとんどの工程を一人で担当するのだそうです。
松田さんは
「ビスポーク靴を作る上で、お客様と話をするのは一人だけです。分業にすればするほど、お客様が本当に必要とする何かが薄れてしまう。」と言います。
長年の技術を受け継ぎつつも、自分の考えを加えることで、新しい道を開く。
まさに職人といった姿勢ですね。
松田さんの座右の銘は、恩師であるテリー氏の
「靴づくりで一番大事なことは、一杯の紅茶だ」という言葉。
これはイギリス人がどれだけ紅茶を愛しているか、大事にしているかを表しつつも、時にはティータイムのように休憩して、心にゆとりを持てという意味だそうです。
これはビジネスの世界にも当てはまる事で、がむしゃらに頑張ることも大事だけど、たまには休憩も必要ということですね。
いかがでしたでしょうか。
いきすぎは良くありませんが、松田さんのように時には思い切って行動してみると違った閃きがあるのではないでしょうか。